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私は糖尿病です【I have diabetes...】

私は糖尿病患者です。管理人が自分の戒め、そして備忘録としてここに糖尿病についての情報・知識・思っていることを綴っています。深い意味はありません。ただ、患者がどのように思い、どのように生活しているかを知って欲しい…。そしてあなたの身近な大切な方の支えになってあげてください。

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カーボカウントとは?

 低インスリンダイエットや低炭水化物ダイエットなどは、炭水化物の量を減らしたり、ブドウ糖に変わりやすい炭水化物を避けて食べることで、インスリンの分泌を減らし、脂肪をエネルギーとして使うことで痩せようというダイエット方法です。
 しかし、ここで言うカーボカウント法は、やせるための方法ではなく、食事中の炭水化物が血糖に与える効果を知ることで、血糖値のコントロールをしようという考え方です。したがって、炭水化物量を減らしたりすることを勧めている方法ではありまが、炭水化物の量や内容が、インスリンの分泌やインスリン量の必要性に、強い影響を与えるという事実に基づいているという点では、低インスリンダイエットや炭水化物ダイエットと同じです。

 炭水化物は、ごはん、パン、うどんなどに多く含まれます。消化されて糖質になり体のエネルギーになるものと、消化されないいわゆる食物繊維に分けられます。糖質は、消化分解されてさまざまな糖になり、さらにもっとも小さな単糖類、単糖類が2個結合した二糖類、複数連なった多糖類に分類されますが、体に吸収されるためには単糖類にまで分解される必要があります。その中でも単糖類の代表がブドウ糖ですが、ブドウ糖は吸収されると、すい臓からインスリンが分泌されます。
 炭水化物の中でも、分解されてブドウ糖になりやすい食べ物と、ブドウ糖になるのに時間がかかる食べ物があります。ブドウ糖になる時間の早い食べ物は、血糖が上がりやすく、インスリン分泌も高める作用もあります。インスリンは、あまったブドウ糖を脂肪に蓄える作用がありますし、反対にインスリン不足の状態では、脂肪を分解してブドウ糖に変わります。

 炭水化物は、さまざまな穀物やフルーツ、豆類に多く含まれていますが、食物繊維も多く含んでおり、このような食品にはさまざまなビタミンやミネラルなど大切な栄養素が豊富に含まれます。したがって、安易に炭水化物の摂取を減らしたりすることは、さまざまな栄養失調を生じ恐れがあります。
 カーボカウント法は、よく理解し、実践することで上手に炭水化物を摂取することで、バランスの良い豊かな食生活を助けてくれる方法だといえます。

炭水化物量の単位

 まず、自身の摂取エネルギーがど程度必要なのか、その中で炭水化物がどれくらい必要なのかを知る必要があります。通常、炭水化物は1gで4kcalあります。カーボカウント法が研究され始めたアメリカでは、通常サイズの1個のロールパンにはおよそ15gの炭水化物が入っているため、15gの炭水化物を1カーボ(Carbo)という単位で計算することになっています。しかし、日本の食品交換表に基づいた計算では、80kcalを1単位として計算する方法を用いているため、炭水化物1g=4kcalなので、1単位がすべて炭水化物からなるとすると20gに相当します。アメリカ式の炭水化物15gを1カーボという単位にする計算では難しくなるため、ここでは10gの炭水化物を1カーボという単位で計算することとします。

必要摂取エネルギー量

 一般的な成人の摂取カロリーの目安は、だいたい1,800kcal~2,200kcal前後と言われていますが、これは目安であって男女の性別や年代によっても違います。
 年齢を重ねるほど、体内の代謝は悪くなるので、基礎代謝量は減ってしまいます。ということは、摂取するカロリーも少なくていいわけです。また女性より男性の方がカラダも臓器も大きいため、基礎代謝量は高くなります。これに加えて体を動かす量によって異なる消費カロリーを足したものが、その人の1日の摂取カロリーの目安になります。
標準体重からの必要摂取エネルギーの計算方法

必要な炭水化物量

 次に、自分に必要な炭水化物量を計算してみましょう。エネルギーの源は炭水化物、脂質、たんぱく質の3つの組み合わせですが、日本では、炭水化物50~70%、脂質20~30%、たんぱく質20%未満が適正な値とされています。この割合と炭水化物1gが4kcalなので、ここでは計算しやすいように炭水化物60%として必要な炭水化物量を計算します。炭水化物量の計算方法

インスリン療法とカーボカウント

 カーボカウントの大きな利点は、食事中のカーボ量が把握さえできれば、必要なインスリン量がわかるということです。使い方さえわかれば何でも食べられる、少しぐらい食べる量が増えても大丈夫ということになります。ただし、この考え方が単純に利用できるのは、食事前のインスリンが超速効型インスリンか速効型インスリンである場合です。
 インスリンは、健常人では常に1日中少しずつすい臓から分泌(基礎:Basal)されており、食事に伴い食べた内容に応じた分だけ急速に分泌(追加:Bolus)されます。

正常なインスリン分泌
正常なインスリン分泌【グラフ】インスリンは常に1日中、少しずつ分泌されており、食事に伴い食べた内容に応じた分だけ急速に分泌されます。

 基礎インスリンをNPH(neutral-protamine-hagedem:中間型)や持続型インスリンで補い、各食事前に速効型や超速効型インスリンを打つという方法で、この正常のインスリン分泌に近い効果をに狙った方法を、基礎‐追加療法(Basal-Bolus療法)といいます。インスリンの自己分泌がほとんどない人では、1日に必要なインスリンのうち、それぞれ基礎インスリンに必要なインスリンは40~50%、追加インスリンは50~60%程度が必要です。カーボカウント法を用いることで、この追加インスリン量の調節ができるわけです。
 まず、速効型インスリン、超速効型インスリンアナログ注射後の、時間経過と効果について理解する必要があります。

インスリン注射後の経時的効果
インスリン注射後の経時的効果【グラフ】 速効型インスリンは2~3時間に効果のピークがあり、約6時間効果が持続します。
超速効型インスリンは1~2時間で効果のピークがあり、4時間以内で効果がなくなります。

 速効型インスリンは注射後2~3時間後にもっとも良く効き、約6時間効果が続きます。超速効型インスリンは注射後すぐに効果を表し、1~2時間後にもっとも良く効き、3~4時間で効果がなくなります。そして、炭水化物による血糖上昇は、食後1~2時間で最高で、3~4時間でもとに戻りますので、ちょうど超速効型インスリンの効果と同等といえるので、普通は超速効型インスリンのほうが炭水化物量に合わせやすいのです。しかし、前述の通り多くの脂肪やたんぱく質をいっしょに食べたときなどは、血糖の上がり方が少し変わりますので工夫が必要です。

インスリンカーボ比

 次に食事中の炭水化物の量とインスリンの関係について計算してみましょう。1カーボ(10g)の炭水化物を食べるときに、どれくらいのインスリンが必要かという目やすをインスリンカーボ比といいます。成人では1カーボ(炭水化物10g)で超速効型インスリン1単位、速効型インスリンなら1.2単位ほど必要であると言われますが、実際にはこのインスリンカーボ比は個人差が大きいため、次のインスリンカーボ比の求め方を用いて自分はどれくらいなのかを知っておきましょう。尚、ここではCSIIを実施し超速効型インスリンを使用していることを前提に説明します。2型の方で注射を使用している場合や速効型インスリンを使用している場合などは計算の数値が相違しますのでご注意ください。

500ルール

 まず、一日に打っている1日総インスリン量(TDD:total daily dose of insulin)を合計します。そして500÷TDDを計算すると、その数値が一単位のインスリンに対応する炭水化物のグラム数です。
 例えば、朝・昼・夕の食事前に追加インスリンをそれぞれ8単位、基礎インスリンを24単位打っている場合、TDDは8+8+8+24=48になり、500ルールを用いて500÷48=10.4となるため、超速効型インスリン1単位で約1カーボが対応するということになります。これは、逆に1カーボが、超速効型インスリン0.96単位(約して1単位)必要ということでもあります。
 1日総インスリン量が20単位以下や80単位以上の場合には、うまくいかない傾向が強いので注意してください。一番簡単ですが、不正確である可能性がありますので、ほかの方法でも確認してください。あなたの1日総インスリン量は?

1回の食事でインスリンカーボ比を調べる方法

 この方法では、基礎インスリン量がうまく調整できていること、つまりその時間帯に食事やインスリンを追加しなくても血糖が大きく変動しないということと、4時間以内に他の食事もインスリン注射もしていないという条件が必要です。
 食事前の血糖値をはかり、100~150mg/dLぐらいのときを選びます。そして、Bolus注入直後にカーボ量のわかりやすい食事を食べてください。そして食後3時間半後の血糖が食前血糖におよそ(前後30mg/dL程度)戻っていれば、インスリン量と食事のカーボ量は合っているということになります。
 2番目に簡単な方法ですが、同じ人でも日によって違うことがありますので、何度も繰り返したり、ほかの方法でも検討してみてください。

1日の食事内容からのインスリンカーボ比を求める方法

 少なくとも3日以上行う必要があります。また血糖コントロールが良好で安定している時に、実際の食事の炭水化物量と1日の食事前インスリン注射量から計算します。
 つまり、1日の食事中の炭水化物量が25カーボ(250g)で、各食前のBolusインスリンの1日合計が24単位であるとすると、24÷25=0.96となり、1カーボとインスリン1単位(0.96を約して1単位)が相当することがわかります。

 以上の算出法を参考に、自分のインスリンカーボ比を計算して、インスリン1単位にどれだけの炭水化物量が相当するのかを知り、1カーボ食べるためにどれだけのインスリンが必要なのかを知りましょう。
 ただし、体調・気候・時間帯(1日のうちでも、早朝などはインスリンが効きにくいことが多い)・運動量によっても、インスリンカーボ比は変化するため、それぞれの食事ごとにインスリンカーボ比を設定することが必要です。日本人は摂取エネルギーの約60%が炭水化物です。そして1日インスリン量の約60%が食前の追加インスリンとなることが多いのです。

インスリン効果値の計算(1,800ルール)

 インスリンは、食事のためのBolus注入以外に、高い血糖を補正するためにも追加します。したがって、インスリン効果値(1単位のインスリンにより、血糖がどの程度下がるのか)を知っておく必要があります。一般的なデータから、超速効型インスリンの場合、1単位の注射で3時間半後に1,800÷TDD(速効型インスリンの場合は1単位で5時間後に1,500÷TDD)の分だけ血糖が下がるといわれています。1単位のインスリンで血糖がどれくらい低下するのかの目安

 たとえば、1日48単位打っている患者さんでは、1,800÷48=37.5なのでインスリン1単位で、3~4時間後には血糖が37.5mg/dL下がるということになります。
 もちろん、1日インスリン量が20単位以下や80単位以上の場合など実際には計算どおりにいかないことがありますので、実際にどうなるのかを確認しておくことが重要です

高血糖の補正

 高血糖を追加のインスリンで補正する場合、(今の血糖-目標血糖)÷インスリン効果値が補正に必要なインスリン量です。ただし、正確に測定するには、前のインスリン注射・食事より4時間以上経っており、3時間半程度は飲食しないことが必要です。 例1:1日45単位のインスリンを打っている場合 基礎データ 1単位の超速効型インスリンで血糖はどのくらい下がるのか調べてみましょう

食事前のインスリン量の計算

 食事前のBolus注入は、インスリンカーボ比とインスリン効果値の両方を用いて、これから食べる食事中の炭水化物のためと血糖値を補正するためのインスリンを足して打ちます。次のような計算によって、追加インスリンの量を算出します。(食事前の血糖値-目標血糖)÷インスリン効果値+(食事中の炭水化物量)×インスリンカーボ比=必要なインスリン量

食事前の追加インスリンの計算方法食前の追加インスリンの計算方法

日や時間帯によるインスリン量の調整、目標血糖の設定

 同じ人でも時間帯や日によりインスリンの効き方は違います。インスリンカーボ比もインスリン効果も運動量や体調などを考えて調整することが必要です。低血糖の多い人や運動前後、寝る前などは少し高め(150~180mg/dL程度)に設定するなど、目標血糖をどれくらいにするのかも調整が必要です。インスリンの効き方の違います インスリンカーボ比を調節するときは0.5単位ずつ増減します。つまり、朝食に1カーボ1単位が必要な人なら、よく運動した後の夕食前は1カーボ0.5単位というように減らす必要があるかもしれません。また、逆に運動不足でインスリンの効きにくい日なら1カーボ1.5単位増量する必要があるかもしれません。
 追加インスリンの場合は、必要インスリンの1~2単位を増減します。たとえば、インスリン効果値が普段50で目標血糖を150mg/dLの人が、夕食前の血糖が250mg/dLだったとします。250-150=100、100÷50=2となり追加注入量は2単位必要となりますが、昼によく運動した日なら1単位に減らしておきます。逆に運動量の少なかった日や生理前などでは、3単位にしておくほうがよいかもしれません。

その他

インスリン効果値とインスリンカーボ値の関係

インスリン効果値×0.28=インスリンカーボ値です
   (1,800 ÷ χ × 0.28 ≒ 500 ÷ χ)


脂肪やたんぱく質の多い食事と血糖への影響

 一般にたんぱく質の約50%、脂肪の約10%が時間をかけてブドウ糖に置き換わるといわれています。しかし、たんぱく質や脂肪のブドウ糖への変化量やそのための時間もまちまちで、血糖への影響を予想することは容易ではありません。

脂肪の多い食事

 チーズがたくさんのったピザ、焼肉、てんぷら等油を使用したメニューなど脂肪の多い食事の場合、食後2時間の血糖は急に上がることはありませんが、炭水化物よりも遅れて3~5時間後に血糖が上がってくることがあります。
 したがって、そのような食事の場合は、Bolus注入を食後にする方か、スクエア注入やデュアル注入等により長時間に渡って注入するほうがよいことがあります。ただ実際には、4時間ぐらいに血糖に応じてインスリン効果値を用いて補正のための追加注入をするという方法がよいと思われます。

たんぱく質の多い食事

 たんぱく質は、血糖を上昇させる作用は少しですが、ゆっくりとブドウ糖に変化され、4時間から12時間後に血糖の上昇が見られ、たとえば夕食に50g以上のたんぱく質を多く含む焼肉、チーズなどを食べると、眠前や翌朝の高血糖の原因になりやすいといわれています。そのような場合は、上記の脂肪の多いときと同じように、食後の追加注入やスクエア注入やデュアル注入が必要なことがありますし、基礎インスリンも少し増量したほうがよいこともあります。

【参考】入院食
【参考】既製食品カロリー表